SHOTAI · 第1部 · 第5章 建て方の最低限 pip・ロット・証拠金・注文種別。配管を知らずに水は流せない。
ここまでの第0部で「何に賭けているのか」「相手は誰か」「なぜ9割が負けるのか」を見てきた。この章はギアが変わる。 思想の話ではなく、ボタンの押し方――配管(はいかん)の話だ。どれだけ良い水(良い相場観)があっても、 管が漏れていれば床は水浸しになる。FXの配管とは pip・ロット・証拠金・注文種別という4つの基本部品。 ここを雑にしたまま建てると、相場観が当たっても口座は減る。
この記事のサマリ
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 🎯 学べること |
① pip(ピップ) とは何か、1pipがいくらになるかの計算 ② ロット(通貨量) と通貨量の関係(1万通貨=何ロット問題) ③ 証拠金とレバレッジ の関係、なぜレバが「危険の倍率」なのか ④ 注文種別(成行・指値・逆指値・OCO・IFD・IFD-OCO)を図で理解 ⑤ 損切り注文を「必ず置く配管」として習慣化する理由 ⑥ 当デスクの時間軸(1D/4H/1H/15M/5M/1M) の使い分けと、スイングが上位足を主戦場にする理由 |
| 🛠 実技で体験 |
① デモ口座で1回だけ「建てる → 逆指値(損切り)を置く → 決済する」を体験する手順チェックリスト ② 自分の口座で 1pipの金額 と 適正ロット を実際に計算する記入式テンプレ |
| ✅ 持ち帰り |
① 覚える式は1本:1pipの金額 = 取引数量 × pipの大きさ(ドル円なら1万通貨で約100円) ② 損切り(逆指値)を置かない注文は、未完成の配管だという原則 ③ 成行 / 指値 / 逆指値を場面で使い分けられる状態 ④ スイングを学ぶ本シリーズでは上位足(日足・4H)が主戦場だと知り、/desk/usdjpy の時間軸切り替えと接続する |
この章を一言で
配管とは、水を正しく流すための管のこと。FXでいう配管とは、pip・ロット・証拠金・注文種別という4つの基本部品だ。 ここを雑にしたまま建てると、相場観が当たっても口座は減る。この章で覚えるのは、たった一個の式だ。
1pip動いたときの損益額 = 取引数量(通貨) × 1pipの値幅
例) ドル円・1万通貨の場合
10,000 通貨 × 0.01 円 = 100 円 → 1pip ≒ 100円
この「1pip=いくら」が腹に入っていないと、損切り幅もロットも証拠金も決められない。逆にこれ一個さえ握れば、 残りはすべてここから逆算できる。順に、図と表で解剖する。
01pip(ピップ) ―「値動きの最小単位」を金額に変える
pipとは Percentage in Point の略で、為替レートが動く幅を数える共通単位だ。「ドル円が30pips上がった」のように使う。 国は2種類だけ覚えればいい。
| ペアの種類 | 1pipの値幅 | 具体例 | 1pip動いた例 |
|---|---|---|---|
| クロス円(USD/JPY, EUR/JPY 等) | 0.01 円 | 150.00 → 150.01 | +1pip |
| ドルストレート(EUR/USD, GBP/USD 等) | 0.0001 | 1.0850 → 1.0851 | +1pip |
多くのブローカーは、これをさらに10分割した pipette(ピペット/少数1桁多い表示) を出す。ドル円が「150.012」のように 1桁多く出るのがそれ。慌てなくていい。桁が1つ多いだけで、痛みの単位はpipだと覚えておけば足りる。
1pipを「円」に翻訳する
pipはあくまで「値幅」。痛みを感じるには 金額(円) に翻訳する必要がある。式は冒頭の一個だけ。
1pipの損益額 = 取引数量(通貨) × 1pipの値幅
ドル円を 10,000通貨 建てた場合
10,000 × 0.01円 = 100円 / 1pip
→ 30pips取れたら +3,000円
→ 30pips逆行したら −3,000円
| 取引数量 | ドル円の1pip ≒ | 30pips動いたら |
|---|---|---|
| 1,000通貨 | 約 10 円 | 約 300 円 |
| 10,000通貨(1万通貨) | 約 100 円 | 約 3,000 円 |
| 100,000通貨(10万通貨) | 約 1,000 円 | 約 30,000 円 |
ドルストレート(例 EUR/USD)の1pip価値は厳密には「数量×0.0001×ドル円レート」で円換算が必要になる。本章はまず クロス円で感覚を固める。EUR/USDの円換算は応用、まずは「1万通貨=1pip約100円」を体に入れる。
02ロット(通貨量) ―「単位の罠」を最初に潰す
ここが初心者が最初に混乱する関門だ。「1ロット」が何通貨かは、ブローカーによって違う。 同じ「1ロット」でも、 片方は1万通貨、片方は10万通貨。これを知らずに「1ロット」で建てると、想定の10倍を建ててしまう事故が起きる。
| 呼び名 | 通貨量 | ドル円1pip ≒ | 性格 |
|---|---|---|---|
| マイクロロット | 1,000通貨 | 約 10 円 | 練習・極小実弾向き |
| ミニロット | 10,000通貨 | 約 100 円 | 個人の標準的な1枚 |
| スタンダードロット | 100,000通貨 | 約 1,000 円 | 大きい。初心者は触らない |
03証拠金とレバレッジ ―「倍率」は利益と損失の両方を拡大する
なぜ少ない資金で大きな金額を動かせるのか。それが 証拠金(しょうこきん)取引 だ。実際の取引額の一部を 「担保(証拠金)」として預け、その何倍もの取引をする。この「何倍」が レバレッジ だ。
レバレッジ = 取引金額 ÷ 必要証拠金
ドル円150円・1万通貨(取引額150万円)を建てる
レバ 1倍 → 必要証拠金 1,500,000円
レバ 5倍 → 必要証拠金 300,000円
レバ 10倍 → 必要証拠金 150,000円
レバ 25倍 → 必要証拠金 60,000円
※同じ150万円のポジションでも、
預ける担保はレバで変わる
レバと必要証拠金の表(ドル円150円・1万通貨=取引額150万円の例)
| レバレッジ | 必要証拠金 | 性格 |
|---|---|---|
| 1倍 | 1,500,000円 | 現物に近い。値動きと同じ痛み |
| 5倍 | 300,000円 | 抑制的 |
| 10倍 | 150,000円 | やや積極 |
| 25倍(国内個人の上限) | 60,000円 | 上限。証拠金が薄い=退場が速い |
ここで誠実に言う。レバレッジは「利益の倍率」ではなく「値動きの影響を口座に対して何倍にするかの倍率」だ。 利益も損失も同じだけ拡大する。第0部・第3章で見た「DD(資産の落ち込み)の非対称性」――マイナス50%を取り返すには プラス100%が要る――を思い出してほしい。高レバは、その致命的なマイナス50%に到達する速度を上げるだけだ。
同じ「ドル円が30pips逆行」でも…
レバが低い口座(証拠金100万) : −3,000円 → 口座の-0.3%
レバが高い口座(証拠金6万) : −3,000円 → 口座の-5.0%
↑同じ値動きでも痛みが約17倍
ロスカット ―「強制決済」という最後の弁
証拠金が不足すると、ブローカーは強制的にポジションを決済(ロスカット)する。これは保護装置でもあるが、 急変時はロスカットが間に合わず、預けた以上の損失(追証)が出ることもある(テールの話は第21章で扱う)。 高レバ=ロスカット line に近い場所で戦う、ということ。
04注文種別 ―「いつ・いくらで」を機械に任せる4つの基本
ここからが配管の心臓部だ。注文には種類があり、「いつ・いくらで建てる/決済するか」を事前に機械へ指示できる。 チャートに張り付かなくていいのは、この仕組みのおかげだ。まず3つの基本を押さえる。
3つの基本注文 ―「方向」と「目的」で整理する
| 注文種別 | 読み | どんな時に発動 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 成行 | なりゆき | 今すぐ・現在値で約定 | すぐ建てたい/すぐ逃げたい |
| 指値 | さしね | 今より有利な価格に到達 | 押し目買い・戻り売り(待ち伏せ) |
| 逆指値 | ぎゃくさしね | 今より不利な価格に到達 | 損切り/ブレイクアウト追随 |
最重要は逆指値(損切り)だ。 多くの初心者は「成行で建てて、含み損になったら祈る」をやる。これが退場の典型パターン。 逆指値は「ここまで来たら自動で損切りする」という、感情を排除する弁だ。
05OCOとIFD ―「待ち伏せ」と「利確・損切りの同時予約」
基本3種を組み合わせると、寝ている間も配管が働く。代表が OCO と IFD、そして両者を合体させた IFD-OCO だ。
OCO ―「どっちか発動したら、もう片方は取り消し」
OCO(One Cancels the Other)は、2つの注文を同時に置き、片方が約定したらもう片方が自動キャンセルされる仕組み。 建てた後の「利確」と「損切り」を同時に予約するのに使う。
IFD ―「建ったら、ついでに次の注文も自動セット」
IFD(If Done)は、新規注文が約定したら、あらかじめ決めておいた決済注文を自動で発注する仕組み。 「指値で買い、約定したら損切りも自動で置く」が一手でできる。
IFD-OCO ―「待ち伏せ」+「利確損切り同時」の全自動
両者を合体させたのが IFD-OCO。新規エントリー(IFD)が約定した瞬間に、利確と損切りのOCOが自動セットされる。 寄り付き前にこれを仕込めば、相場を見ていなくても「建て→利確 or 損切り」まで完結する。スイングと相性が良い。
| 注文セット | 何を自動化するか | スイングでの典型用途 |
|---|---|---|
| OCO | 利確と損切りの同時予約 | 既に持っている建玉の出口を両建てで管理 |
| IFD | 建て+決済のワンセット発注 | 押し目で買い、約定即損切りを置く |
| IFD-OCO | 建て+利確+損切りの全自動 | 寄り付き前に仕込み、相場を見ずに完結 |
スイング(数日〜数週間保有)では、四六時中チャートを見るのは現実的でない。IFD-OCOは「見ていられない時間」を配管で埋める道具だ。 ただし――道具が増えても原則は同じ。損切り(逆指値)の枝は、必ずどのセットにも入れる。
06時間軸(タイムフレーム) ―どの「足」で戦うか
最後の配管は「時間軸」だ。同じドル円でも、1分足で見るか日足で見るかで、見える景色も戦い方もまるで違う。 当デスクは /desk/usdjpy で 1D / 4H / 1H / 15M / 5M / 1M を切り替えて分析する。それぞれに用途がある。
時間軸別の用途表
| 時間軸 | 見えるもの | 主な用途 | 本シリーズでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1D(日足) | 数日〜数週間の地合い | 大局の方向・レジーム判断 | 主戦場 |
| 4H(4時間足) | 数日のトレンド | エントリーの起点・損切り幅の設計 | 主戦場 |
| 1H(1時間足) | 日中の流れ | タイミングの微調整 | 補助 |
| 15M(15分足) | 短期の押し・戻り | エントリー精緻化 | 補助 |
| 5M(5分足) | 直近の細かい動き | 約定価格の最適化 | 補助 |
| 1M(1分足) | ほぼノイズ | スキャルピング領域 | 初心者は避ける |
なぜスイングを学ぶ本シリーズは上位足(日足・4H)を主戦場にするのか。 理由は第0部の結論と一直線だ――FXはマイナスサム (コスト×頻度で失血する)。下位足ほど取引回数が増え、コストの失血が加速する。 加えて、第11章で詳しく扱うが、 「持たないでいられる」「待てる」ことが個人の数少ない優位であり、その優位が最も効くのが上位足だ。1分足の世界は、 速度と執行コストで機関に勝てない領域。個人は、時間軸を上げることで、土俵を有利に変えられる。
体験 ― 今すぐ手を動かす
読んで終わりにしない。この章の体験は、デモ口座で「1回だけ」建てて決済すること。 損益の大小は一切どうでもいい。 目的は「建てる → 損切りを置く → 決済する」という配管の一往復を、手で通すこと。
① デモ口座 一往復チェックリスト(必ず逆指値を置く)
| □ | ステップ | 確認ポイント |
|---|---|---|
| □ | デモ口座を開く(リアル資金は使わない) | 口座種別が「デモ/練習」になっているか |
| □ | 「1ロット=何通貨か」を設定画面で確認 | §2の罠。通貨量で把握したか |
| □ | ドル円を最小数量(例 1,000通貨)で成行買い | 1pipが約いくらか言えるか(§1) |
| □ | すぐに逆指値(損切り)を置く | これが無いと未完成の配管(§4・鉄則③) |
| □ | (任意)利確の指値も置いてOCOにする | 出口の両枝が揃ったか(§5) |
| □ | 数分〜翌日、価格が動くのを観察 | 含み損益が「1pip=いくら」で動くのを体感 |
| □ | 成行で決済 して一往復を閉じる | スプレッド分だけ不利に始まったのを確認(第1章) |
| □ | 取引履歴で「スプレッド+(持ち越したら)スワップ」を確認 | 第1章の「年間失血率」と接続 |
→ この一往復で、pip・ロット・証拠金・注文種別の4部品が全部一度に手を通る。頭でなく指で覚えるのがこの章の狙い。
② 自分の口座で「1pip」と「適正ロット」を計算する
| 記入欄 | あなたの値 |
|---|---|
| 通貨ペア(まずはドル円推奨) | ____ |
| あなたの口座の「1ロット」=何通貨 | ____ |
| 建てたい数量(通貨) | ____ |
| 1pipの金額 = 数量 × 0.01円(クロス円) | ____ 円 |
| 想定する損切り幅(pips) | ____ pips |
| 1回の最大損失 = 1pip金額 × 損切り幅 | ____ 円 |
| 口座残高 | ____ 円 |
| その損失は口座の何%か(後章で1〜2%が目安) | ____ % |
→ この「%」が大きすぎるなら、数量を減らす(または損切り幅を見直す)。サイズは感覚でなく、この逆算で決める。 詳しい資金管理は第20章で扱うが、配管としての計算は今ここでできる。
アクション ― 次の一歩
① デモ口座で「一往復チェックリスト(体験①)」を1回だけ実行する。 損益は問わない。逆指値を置けたか、決済まで 閉じられたか、だけを確認する。スクリーンショットを残すと第13章(予測日記)の素材になる。
② 自分の口座の「1ロット=何通貨」「個人レバ上限」「ロスカット水準」の3点を設定画面で確認し、下表に記録する。 これは配管の「型番確認」。最新値は各ブローカーの口座情報で必ず確認すること(断定しない=記入式)。
| 確認項目 | あなたの口座の値 | 確認した日 |
|---|---|---|
| 1ロット=何通貨 | ____ | ____ |
| 最大レバレッジ | ____ 倍 | ____ |
| ロスカット水準(証拠金維持率) | ____ % | ____ |
| 主要ペアの往復スプレッド(pips) | ____ | ____ |
③ 当デスク /desk/usdjpy で時間軸(1D / 4H / 1H / 15M / 5M / 1M)を切り替え、「同じドル円が足ごとに どう見えるか」を観察する。 本シリーズはスイングを学ぶため、日足・4Hを主戦場にする。下位足でノイズに飲まれず、 上位足で流れを読む――その土俵感覚を、ここで掴んでおく。
1pipの金額 = 取引数量 × pipの大きさ(ドル円1万通貨で約100円)。そして「損切りの逆指値を置かない注文は、 未完成の配管」。この2つだけ持って次へ。
この章の「注文種別」と「時間軸」を、いまの市場で確かめよう。ドル円デスクは 1D / 4H / 1H / 15M / 5M / 1M を切り替えて分析し、すべての建玉を「主張+理由+反証条件+損切り+サイズ」のセットで出している。配管の通った建玉が 実際どう組まれているか――出口(損切り・利確)を先に置く型を、デスクで見て体に入れてほしい。
→ ドル円デスクを見る