事件で読む相場
歴史的な相場危機を、何が起きたか と なぜ起きたか に分けて厚く解剖する常設シリーズ。 通説が指す「犯人」ではなく、現代の市場の配管(レバレッジ・相関収束・ディーラーガンマ)で読み解く。教科書で渡した地図を、実例で動かすための応用編 ―― 各回末は kenny.boats のライブデータで「いま同じ地形をどう見張るか」に着地する。
2020年代 ― いま読むべき事件
- 2024年8月の円急騰は何だったのか ― キャリー巻き戻しの全解剖
日銀の利上げが犯人、ではない。世界が積み上げた“円の借金”の、一斉返済だった。
2024年8月、ドル円は数週間で約20円下落、日経は史上最大の下げ。なぜ利上げ0.15%が日経▲12%になったか。円キャリーの巻き戻しとボラ・ターゲティングの同期で解剖する。
- 日銀がマイナス金利をやめた日 ― 17年ぶり利上げの意味
世界最後の“タダのお金”が終わった。その余波は、円と国債の両方に効く。
2024年3月、日銀が17年ぶりにマイナス金利を解除。世界中の借金の担保だった超低金利の円が値上げされた。金融正常化の出口が円と国債に効く構造を解剖する。
- SVBはなぜ2日で消えたのか ― 金利が銀行を殺す仕組み
取り付け騒ぎは結果。本当の死因は、誰もが安全だと思った“国債”だった。
2023年3月、シリコンバレー銀行は2日で破綻。焦げ付いた融資ではなく、最も安全なはずの債券の含み損が死因。デュレーション損と取り付けの速度を解剖する。
- 株と債券が同時に沈んだ年 ― 2022年、分散投資が死んだ理由
「株と債券は逆相関」は、一番頼りたい年に裏切った。
2022年、株も債券も同時に下落し、最も保守的なはずの60-40ポートフォリオが最も傷ついた。インフレと急速利上げで逆相関がなぜ崩れたかを解剖する。
- 英国年金を1日で壊しかけた“LDI危機”とは ― 2022年ギルト・ショック
減税が引き金。だが本当の爆薬は、年金が抱えた見えないレバレッジだった。
2022年9月、トラス減税が引き金で英国債が暴落、年金のLDI戦略が担保の連鎖売りで自壊しかけた。減税ではなく年金の見えないレバレッジを解剖する。
- GameStop騒動の正体 ― 個人 vs ヘッジファンドではなく“ガンマ”の話
祭りの主役は個人投資家ではない。彼らに買わされた“ディーラー”だった。
2021年1月のGameStop急騰は、熱狂ではなくオプションの数式が引き起こした。ディーラー・ガンマがどう需給を暴走させたかを解剖する。
- 2020年3月、なぜ“安全資産”まで売られたのか ― 現金への殺到
金も米国債も投げ売られた。あの月、世界が欲しかったのはただ一つ、ドルの現金だった。
コロナショックの2020年3月、金も米国債も投げ売られた。分散投資が効かなかったのではなく、効かないことこそ本質だった。ドルの現金への殺到を解剖する。
2010年代
- “恐怖を売る”戦略が自滅した日 ― 2018年ボラ・ショック(XIV)
平穏な相場で毎日小銭を拾う。その裏で、市場は静かにダイナマイトを積んでいた。
2018年2月、VIX急騰でインバースVIX商品XIVが一夜で崩壊。「何も起きないこと」に賭けるショートボラの自己破壊とテールリスクを解剖する。
- Brexitの夜、ポンドはなぜ暴落したのか ― イベントの非対称
市場は『残留』に賭けていた。だから“予想外”の衝撃だけが、価格を引き裂いた。
2016年6月のEU離脱国民投票で、市場は残留に賭けていた。だからこそ予想外の結果だけが価格を引き裂いた。イベントリスクの織り込みと非対称を解剖する。
- スイスフランが20分で30%動いた日 ― 中銀の前提が壊れる時
「中央銀行は約束を守る」。その信仰が崩れた瞬間、市場から流動性が消えた。
2015年1月、SNBが対ユーロ上限を突然撤廃し、スイスフランは20分で30%動いた。中銀の前提崩壊が無流動性のギャップをどう生むかを解剖する。
- “量を減らす”と言っただけで起きた暴落 ― 2013年テーパー・タントラム
中銀は何もしていない。『そろそろ蛇口を絞る』と口にしただけだった。
2013年、FRBが量的緩和の縮小を示唆しただけで新興国通貨が急落。利上げすらしていないのに崩れた、流動性縮小の予告の威力を解剖する。
- 言葉だけで危機を止めた男 ― ドラギの"Whatever it takes"
一兆円も使っていない。たった3語が、崩れかけた欧州を救った。
2012年、欧州債務危機のさなか、ドラギECB総裁の「Whatever it takes」の3語が崩れかけたユーロを救った。中銀の言葉が相場を動かす構造を解剖する。
- 震災で日本が傷ついたのに、なぜ円は急騰したのか ― 2011年
常識なら円安のはず。だが円は史上最高値へ走った。その逆説を解く。
2011年の東日本大震災後、国が傷ついたのに円は史上最高値へ急騰した。リスクオフ円買い・本邦実需・協調介入という逆説の構造を解剖する。
- 市場が数分で消えた日 ― 2010年フラッシュクラッシュ
売り注文は大きくなかった。消えたのは“買ってくれる相手”のほうだった。
2010年5月、米株が数分で溶けて回復した。大きな売りではなく、買い手が消えたこと自体が原因。市場構造・アルゴ・無流動性の瞬間を解剖する。
2000年代
1990年代以前 ― 古典に学ぶ
- 天才たちはなぜ破産したのか ― LTCMとレバレッジの教訓
ノーベル賞のモデルが正しくても、潰れる。市場が“正しくなる前に”資金が尽きるからだ。
1998年、ロシア危機を引き金にLTCMが破綻。史上最も賢い集団が最も古典的な理由=借りすぎで消えた。レバレッジとモデル過信・収束賭けの罠を解剖する。
- アジア通貨危機はなぜ連鎖したのか ― ペッグ崩壊のドミノ
一国の通貨が落ちると、なぜ隣の国まで道連れになるのか。
1997年のタイバーツ暴落から始まったアジア通貨危機。固定相場という「安心」が最大の脆さだった。ペッグ崩壊と資本逃避の連鎖を解剖する。
- ソロスが英国を打ち負かした日 ― 1992年ポンド危機
中央銀行は無限に強い ― そう信じられていた。一人の投機家がそれを嘘にするまでは。
1992年、ジョージ・ソロスの賭けにイングランド銀行が膝をついた。ERMからのポンド離脱を招いた、ペッグ防衛の限界と投機・金利の関係を解剖する。
- プラザ合意とは何だったのか ― 為替を“決めた”5カ国の密約
相場は市場が決める ― その建前を、たった一枚の合意が覆した。
1985年、5カ国が合意し、為替は誰にも操れないという思い込みを壊した。協調介入による為替の政策的転換点と、その後のバブルへの引き金を解剖する。
流動性→金利→為替→株。相場を貫く一本の川を、上流から体系立てて学ぶ。
雇用統計・CPI・FOMC ほか主要指標を「何を見るか・反応関数」で読む常設リファレンス。
アルゴ・パッシブ・AIが市場の構造をどう書き換えたか。AIデスクを運営する当事者の視点で。
過去のサイクルから、世界・戦争・日本の相場の現在地を診断する2026年6月時点の時事レポート。
父をFXで失った経済記者が、富豪の私設クオンツファンドに潜り込む連載小説。実際のドル円の推移を背骨に。毎週火曜更新。